急性緑内障発作 白内障の手術が必要な緑内障があります
緑内障の治療のために白内障の手術が必要となる場合があるのですが、ほとんどの患者さんから
「なぜ緑内障の治療に白内障手術が必要なんですか?」
「白内障の手術で緑内障に効果があるのですか?」
と聞かれます。
診察室で急に聞くと難しい話かな、と思いますので、今回は緑内障(閉塞隅角緑内障・狭隅角)の治療としての白内障手術について、眼科専門医の立場から解説したいと思います。
まず、白内障手術が有効となる緑内障は「閉塞隅角緑内障」というタイプの緑内障です。このタイプは、房水の通り道である「隅角」という部分が狭い「狭隅角」が原因となって生じる緑内障です。
房水の流れのイメージ
正常な方の房水の流れ 狭隅角の方の房水の流れ
隅角が狭いと房水の通り道が狭くなり、流れが悪くなって眼圧が高くなります。
白内障が進行すると水晶体が厚くなってきますので、上の右側のイラストのように後ろから押されて隅角がどんどん狭くなります。
隅角が完全に閉じてしまうと、眼圧が急激に上昇し、「急性緑内障発作」が起きます。発作が起きる直前までは何も症状がなく、診察してみないと隅角の広さはわからないため、気になるようであれば、一度眼科受診されることをお勧めします。
発作を起こしてしまうと急激に視野が失われていき、放置すると数週間で失明に至ることもあります。
「狭隅角」を治療するには、物理的に隅角を広げることが必要であり、そのために白内障手術を行います。
白内障手術前白障の房水の流れ 白内障手術後白障の房水の流れ
白内障手術は、隅角の後ろにある水晶体を眼内レンズに置きかえることを行うのですが、眼内レンズは非常に薄いので、右側のイメージように隅角の後ろにスペースが出来ます。そうすると、自然と隅角が広くなり、房水が流れやすくなります。これにより眼圧が低下し、緑内障の治療効果を得られるのです。
■白内障手術について
白内障は加齢と共に発症率が高くなり、50代で40~50%の方が、70歳以上だとほぼ全ての方が発症する病気です。
白内障を発症すると徐々に見えづらくなっていくのですが、手術で濁った水晶体を人工のレンズに入れ替えることで見え方が改善するため、日本においてはほとんどの方がいずれは経験します。
このことから、いずれ行うと考えられる手術であり、急性緑内障発作の予防にもなり、眼圧の安定も期待できることから、閉塞隅角緑内障の方に白内障手術が提案されています。
当院でも、閉塞隅角緑内障の方に白内障手術を行っておりますので、緑内障でお困りの方や、閉塞隅角緑内障と診断されたことがある方はお気軽にご相談ください。