人工レンズの焦点距離とは?
白内障手術で用いる人工レンズについて、「そもそも焦点距離とは?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。
単焦点レンズと多焦点レンズの違いにも関わる話ですので、今回は人工レンズの焦点距離について眼科専門医の立場から解説したいと思います。
■焦点距離とは?
焦点距離とはピントが合う距離のことで、はっきりと見える距離のことです。
焦点(ピント)が合う合わないは写真で見るとわかりやすく、下の画像ですと、手前の柱に焦点が合っており、奥の車にはピントが合っていません。この焦点が合う距離を焦点距離と言います。
反対に、下の写真は奥の花に焦点が合っており、手前には焦点が合っていません。
目も同じように焦点が合うものがはっきりと見えるようになっており、無意識に見たいものに焦点が合うようになっています。これは目の中にある水晶体の働きによるもので、水晶体の厚みが変わることで、焦点が合う距離を変化させています。
濁った水晶体を除去して人工レンズに置き換えるのが白内障手術ですが、挿入する人工レンズは厚みが変わらないので、基本的には焦点が合う距離は一つだけです。これが単焦点レンズと言われるレンズです。レンズの表面に特殊な加工をして、複数の距離に焦点が合うようにしているものがあり、これを多焦点レンズと言います。
単焦点レンズは、特定の距離(近くや遠くなどいずれか)だけ焦点が合うため他の距離を見るためにはメガネが必要となる。多焦点レンズは複数の距離で焦点が合うので、日常生活ではほとんどメガネがいらなくなる方が多いです。
このように聞くと多焦点レンズの方が良いレンズのように聞こえますが、単焦点レンズの方がコントラストがはっきりするというメリットがあります。
単焦点レンズと多焦点レンズの選び方についてはこちらもご覧ください。
■レンズの選択と焦点距離の関係
白内障手術で使用するレンズは、予め設計された距離に焦点が合うように作られています。そのため、レンズの選択によって手術後の見え方が異なります。
白内障の手術を受ける際は、普段の生活でどのようなものを見ることが多いか、メガネの使用に対する希望(できるだけメガネは使用したくない、頻回にメガネを付け外ししても構わない、など)を整理しておき、診察の際に医師に伝えると良いでしょう。
例えば、普段からメガネをかけずに過ごしており、手元を見るときに老眼鏡を使用している方の場合は、遠くに焦点が合う単焦点レンズがお勧めです。もし、近くに合わせたレンズを使用した場合は、近くは裸眼で見えますが、遠く用のメガネを常に掛けないと生活しにくくなるため、煩わしさを感じる可能性が高いからです。
元来近視がある方は、手元30cm辺りの読書や刺しゅうなどに丁度良い距離に合わすことをお勧めしています。近視の方はメガネを掛けることに慣れており、近づけば何でも見えるという感覚ですので、遠くに合わせてしまうと手元が裸眼で見えないためにストレスに感じるからです。
ですので単焦点レンズの場合は、
・近視の方は手元に焦点を合わせる
・遠くが元々見えていた方は、遠くに焦点を合わせる
というのがお勧めの合わせ方になります。
当院は事前の検査や、手術の説明の際に日常生活でどのようなものを見ることが多いか、メガネの希望はどうか、などを確認した上で、医師が最適なレンズを選択しています。
レンズの選択や、手術後の見え方が気になる方はお気軽にご相談ください。